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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)103号 判決 1958年7月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人鍛治利一、同頼信白正の上告理由第一点及び第二点について。

所論のように組合財産が理論上合有であるとしても、民法の法条そのものはこれを共有とする建前で規定されており、組合所有の不動産の如きも共有の登記をするほかはない。従つて解釈論としては、民法の組合財産の合有は、共有持分について民法の定めるような制限を伴うものであり、持分についてかような制限のあることがすなわち民法の組合財産合有の内容だと見るべきである。そうだとすれば、組合財産については、民法六六七条以下において特別の規定のなされていない限り、民法二四九条以下の共有の規定が適用されることになる。

ところで、ある不動産の共有権者の一人が、その持分に基き、当該不動産につき登記薄上所有名義者たるものに対して、その登記の抹消を求めることは、妨害排除の請求に外ならず、いわゆる保存行為に属するものというべきであるから、民法における組合財産の性質を前記の如く解するにおいては、その持分権者の一人は単独で右不動産に対する所有権移転登記の全部の抹消を求めることができる筈である。(昭和二九年(オ)四号同三一年五月一〇第一小法廷判決参照。この判決は共同相続財産に関するものであるが、民法における組合財産の性質が前記のとおりであるとするならば、その理は組合財産についても同様と解される。)それ故原判決には所論のような違法はない。論旨援用の判例は本件に適切でなく、論旨はすべて理由がない。

よつて民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)

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